徒然

 以前友人に頂いたポール・チェンバース(b)の「GO」。スカッと非常に気持ちがよいハードバップです。この盤はなにせ録音が良い。スタジオライブならではの臨場感と残響音。ウィントン・ケリー(p)のソロでは感極まった女性客の「ケリーー!!」という声が聞こえたりします。
 チェンバースのずんずん迫るベースやアルコ奏法(弓で弾く)。(ちなみにコントラバスのアルコ奏法では最低音で30Hz以下まで出るそうでオーディオチェックにも最適でしょう。普通小型2waySPで下が良くても40Hzくらいまでしか再生できないので最悪聞こえないという状態もあります)*
 ジミー・コブのドラムもキャノンボールのアルトも良いのですが、なによりここで光るのはきらびやかなフレディ・ハバードのトランペットです。

 フレディ・ハバードというとハービーハンコックの「処女航海」やブルーノートに吹き込んだ「オープン・セサミ」なども聴いてはいたのですが、どうも好きになれない。それがこの「GO」を改めて聞き直してみてその陽に振れる音色が好きになってしまいました。

 同じくハンコックやウェイン・ショーター(ts)、トニー・ウィリアムス(d)ロン・カーター(b)にマイルス(tp)というのが60年代の黄金クインテッドですが、このメンツからマイルスだけ抜けて(マイルスは「アガルタ」「パンゲア」を75年に出してそのまま療養生活に入りました)、そこにフレディ・ハバードが入ったバンドがV.S.O.Pです。これは77年頃フリージャズ真っ盛りの頃だったから逆に新鮮だったと思われます。このV.S.O.Pは本当に凄まじい。その異常な高揚感はマイルスの「フォア&モア」に勝るとも劣りません。
 
 ジャズのBGM化を掲げて作られたレーベルCTI、当時(今も)熱心なジャズマニアは毛嫌いします。がここでもフレディ・ハバードは素敵な録音を残しています。「ファースト・フライト」。モロ70年代CTIサウンドですが、フレディの歌心は本当に素晴らしい。

 すっかり今まで苦手だったフレディ・ハバードのファンになってしまったのでした。